シブイオンガクスタヂオが電話での問い合わせに出ない理由は、営業時間に電話応対を担う事務員がいないから、が名実ともに最大の理由でした。多角経営をしているわけではないので、収入は月々のレッスン料が九割です。フルタイム電話応対のできる人材を置くためには、その人の給与分を、レッスン料に積まなくてはなりません。はい。不可能ですね。
いや、そんな話ではなくてね。
いまどきは何を調べても、いわゆるランキングサイトというものがあります。皆さんも一度は当てにしたことがあるでしょう。
ご多聞にもれずボイストレーニング教室にも、ランキングがあります。われらがシブイオンガクスタヂオも、かつてランキングサイトに載っていて驚いたことがあります。「そんなの掲載許可してないよー。責任者出てこい」と、憤ったものでした。何故かと言えば、教室が出来た時から、「競合教室なんてないよー」と、いつも言って来たからです。
がしかし、堂々の一位。東京のボイストレーニングの個人レッスン教室で一位。とか書かれると、そんな気持ちも失せるから不思議です。褒められると悪い気はしないものです。しかも、その理由根拠が、まるで本当に体験して来たかのような記述になっていて、まさに、狐につままれた気分でした。
それに気がついたのは、忘れもしません2015年の初頭でした。とある体験レッスン申込者の証言でした。「なんかランキングで一位でしたから」という、聞き捨てならないセリフでした。検索してみると、たしかに一位。当時はまだ、ランキングサイト自体が今ほどたくさんなかったのです。今や、見切れない数のランキングサイトがありますものね。
どおりで前年の忘年会すなわち、2014年12月14日かな、その日を境に、問い合わせ、体験レッスンの申し込みがとにかく毎日、年末年始だというのにひっきりなし。体験レッスンの予約申し込みが三ヶ月先まで受け付けられない、という事態です。そんなに来られても、まかなえません。当時講師は水道橋と飯田橋の二人きりでした。そんなに忙しくては、電話にも出られないわけです。いえそれもさておき。
思い出したのです。
当サイトの制作は、2010年春から、吉田朋子さんによるペンギンイラストを使用することを前提に、とある制作会社に全面委託しています。その営業のお兄さんが、「社長、ランキングサイト、作りましょう」と言っていたことを。
「ぼくは社長じゃないから」、と言うのにも倦んでいました。世間には、社長と呼ばれたい人がよほど多いのでしょう。それもさておき、SEOに関して成果がまだ出ていなかったため「どうぞどうぞとにかく、なんとかしてください」と、こちらも期待感ゼロ気味の丸投げだったこともついでに思い出したのです。
あれか。
そうです。きっとそうです。私が驚くほどに、まるで教室内事情に精通した、つまりは私が自作自演で作ったかのような素晴らしい出来ばえの、教室紹介。あれを作ってくれたのです。そしてそれを見て、沢山の人がホームページを読みもせず、ランキングサイトだけ見て体験レッスンにいらっしゃいました。
これは余談ですが、ランキングサイトというものは、金儲けの知恵がまるで働かない私から見ればマジックでして、二位以下五位くらいまで載せる会社なり教室からお金をもらって制作できるという仕組みに発展していったらしいですなるほど頭いいー。ひとたびお金がからみ始めると、世の中の大抵のことは怪しさを帯びてまいりますから、珍しいことではないのかも知れませんが。
忙しかった当時確かに景気は良かったけれども、忙しくなり過ぎて逆に余裕がなくなっていたなあと懐かしく思います。やがて数年後には、ランキングサイトは林立していきました。今や、シブイオンガクスタヂオが載っているランキングサイトはほとんどなくなってしまっているのではないでしょうか。だから、現在の会員さんがた、よくぞ見つけて来たものですねえ。もちろん時代が移り、皆さんのあてにするものが、ランキングサイトからアレに移ったから、に過ぎないのですが。本来は、そのような流行に流されない絶対の存在でいたいものだなあと思いますけれども。
現在は、年間のお申し込み数はピーク時の十分の一以下に落ち着いています。心もすっかり落ち着き払っています。でも、十分の一以下だとさすがに暇だよね、と講師陣のスケジュールを見ながらため息をついたりします。ちょうどいい加減というのは、何事もとても難しいです。しばしば、浮世離れしていると自称していますが、なるほどなあこのように世の中の商売というものは出来上がっているのかあと勉強させていただいたものでした。
この暢気な姿勢でよくぞ、コロナ禍を乗り越えて来られたものだと思います。いえ、正確に言えば乗り越えたのではなく、ボロボロになりながら時の流れに引き摺られて来ただけなのですけれども。さ、涼しくなってまいりました。今はまだ枠が空き気味で余裕がありますよ。余裕があるということは、講師もお仕事に追われて窮屈な気持ちになっていないということですから、比較的とても良いコンディションである、ということです。今です。今。