壁をたてる

この14年(シブイ設立以来という意味です)の間に、劇的に変わったこと。

 

一 世の中の人たちが、ボイストレーニングを始めるようになったこと。

 

二十年前、教室のホームページを作った時には、まだまだ一般の人も気兼ねなく(つまり廉価に)通えるボイストレーニング教室なんてそんなになかったので、あの頃は面白いくらいどんどんお申し込みが舞い込んできたものでしたが、それでも、こちらが生活ができるほどとは到底思えなかったものでした。だからこそ生業としては考えにくかったのですが、その後五年のうちに、ボイストレーニング教室なるものが大量発生してきたものでした。需要が増え、競合が増えたのでしょうね。

 

二 世の中の人たちが、防音室を作り始めたこと。

 

壁すなわち防音壁。大雑把な言い方ですが、これでだいたいご理解できるかと思います。

 

壁で囲って部屋にすれば、防音室。大雑把な言い方ですが。まあとにかく、防音の基本は、部屋の中に部屋を作る。です。

 

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そして、市販されている結構なお値段の防音室を実際に見たことのある人はお分かりと思いますが、ごくごく当たり前に音、漏れてます。ただ、漏れた音が更に外に向かってあふれるほどにはならない程度に、減衰させる効力はあります。そういうものです。部屋の中の部屋の音は部屋の外の部屋の外までは、届かない。そういうものなのです。

 

その、部屋の中の部屋を自分で作り、教室に供する。ということをやってきました。が、この際に参考になったのはweb上に公開されていた、防音室を作ってみたという記事たち。これが今やあふれんばかりなのですが、二十年前は、さほどありませんでした。

 

不思議なことに、一般の皆さんがご家庭内に防音室を作る、という需要が激増しているのですね。カラオケボックスでもことたりる人もありましょう。でも、外のものおとが聴こえてこないような静かな防音室が、求められているようです。やはり、昭和は遠くなりにけりです。私の実家は板橋区の住宅密集地の中で、四方にお隣宅にあり、すべて窓から足を出して跨いで渡れる距離です。その中で高校生の頃は友達三人で楽器鳴らして大きな声を出して歌っていたものでした。この季節は当然窓も開いていました。今思えば恥ずかしいほどですが、苦情一つなかったのは三十年以上も前だからでしょうか。話が逸れましたか。

 

どうあれ、個々の目的に応じた作り方の知識が共有されるということは、とても心強いものです。写真は、今回四谷教室に作る間仕切りの立体イメージです。とても世界で共有する価値のあるものではありませんが、まあいいじゃないですか。市井の不器用な個人事業主の夢想の具現過程のサンプルです。

 

 

さて。こんな話ばかりでは益が少なそうです。話題を変えます。

 

先日武道館へコンサートに行って、とにかく出るようになった声を試すべく、教室でやるように声を出してみたけれども、全然出なくて、習う前と同様に喉が痛くなった、という方がありました。今週は武道館に行かれた方がとても多かったようですね。

 

経験のある方は多いと思います。せっかく声出るようになったと思ったのに、ぜんぜんだなー、という苦い体験。

 

この場合は簡単です。自分の声が聴こえなかっただけです。当然のことながらPAシステムによる轟音ともいうべき環境と、自分の周りのオーディエンスの声に、自分の声は完全にかき消されていることでしょう。もしも自分の声が聴こえたら、そんなことにはならなかったことでしょうに。次の機会には、両手で自分の口を覆って隙間を耳に向けて作って声を出してみてね、と応えておきました。

 

自分の声がきこえないから、きこえるようにと、のどが痛くなるほど頑張る。

 

これ、アマチュアのバンド練習が行われるスタジオでは昔から恒常的に起きていることですし、カラオケボックスでも簡単に起きている事象です。うたうと喉が痛くなる、の原因の半分はこれなんじゃないかしら。私がまた壁を作っている間に、うたうと喉が痛くなる皆さん、お試しくださいませ。ご自身で類推して理解できる方もありましょう。環境などを試行錯誤して分かる人もありましょう。どうしても分からない方は、体験レッスンへどうぞ。