自転車が乗れるようになったのも、
体が乗り方を覚えるまで練習したから。
おそらくここをわざわざ読まれる方は、「腹式呼吸を使って歌う」ということに漠然とイメージを持ちながらも明確には分からない故に、それを身につけたいとお思いだと思います。
「さぁ、下腹に力を入れて声を腹から声を出してみよう」といったイメージでしょうか。実は、ほとんどの方がイメージするものと違うというのが実状です。物まねの得意な方で、講師の出す出し方をその場で真似て覚えてしまったというような例はありますが、たいていの場合、今まで発声してきた状態や腹式呼吸のイメージとあまりにも違うことに、戸惑うことでしょう。
ですから、私はよく例えて言います。右利きの人が左手で字を書くのと同じだと。逆に言えば、左手でずっと繰り返し字を書いていれば、いずれは書くことが出来るようになるといえば、イメージしやすいかと思います。
ならば、話は簡単です。繰り返し、身体に覚えるまで動作させてあげることです。字を書くのと違って、ペンの握り方は例えば鏡を使えば左手で握った状態が目で見てイメージ出来ますが、腹式呼吸を有効に使った発声は、目で見てイメージ出来ないという難点があるものの。
つまり、過剰に意識することなく出来るようになるまで、「身につける」為の方法は、繰り返し、繰り返し、身体に体験させてあげることに他ならないのです。これは実に根気の要ることですが、何事に於いても言えるように、確かなことです。
ただし、なんと実際の腹式呼吸を使った発声が、普段無意識に行っている呼吸ならびに発声により近いことが、驚きとともにいずれ分かりましょう。