声はデリケート

声はデリケート

声をいつも同じように出すというのは、とても難しいことです。例えば、簡単な歌で良いです、ご自分で16小節だけ、歌って録音してみて下さい。そして、も う一度、寸分たりとも違わないつもりで、もう一度歌って録音してみて下さい。多くの場合、聞き比べるまでもなく、まったく同じには歌うことは難しいと感じ られると思います。まぁ、これは技術的な問題もあります。二度目の録音を翌日にすると、さらに良く分かると思います。

発声は、体調、気分にかな り左右されます。先ほどの例で言えば、二度続けて歌っても、二回目は、一回目と同じように歌わなくちゃという緊張感を伴います。これで変わってしまいま す。翌日に歌うともなると、寝不足あるいはその逆、または気分の悪い夜を過ごしてしまったり、同様にその逆など、同じコンディションというのは、ほとんど あり得ないのです。

しかし、歌手を職業とするともなると、そんなことは許されません。CDのあの声が聴きたいと思って集まったお客さんに、同じ声を届けなくてはならないのが基本です。無論、生演奏の良さはそこにあるわけではありませんが。

となると、どんな時にも、自分の発声をコントロールする技術が必須となるわけです。この為には、日頃から自分のことを知っていなくてはなりません。表には出さないけれど、実は不機嫌な自分がいたりしませんか?元気なつもりでも疲れている自分がいたりしませんか?

自分の状態を客観的に捉えることが必要になります。長じて、自分の体調を管理するようにもなれば、ボイストレーニングも、発声だけを変えるものではないことがおわかりかと思います。