いったい何のためのボイストレーニングなんだろう

どこでどのように流布されたのか不明ですが、ボイストレーニングはプロの歌手になる人がデビュー前にちょこちょこっとやっておくものらしい、という雰囲気程度の認識が蔓延っているようです。

この認識の二大勘違いを示しておきましょう。つまり事実誤認です。

ひとつめ。プロの歌手たるやいつでも同じクオリティで発声することが求められます。パンやさん然り、サービス業然り、この国のお仕事には当然のように求められることですね。ですからそのために必要な人の場合は、必ず行うでしょう。ただし、その密度頻度重要度はその人の資質或いは商業的な目的次第で大きく変わりましょう。いずれにせよ、プロ御用達ともなれば、非常に需要は少ないことになります。だって、そんなに沢山のプロは不要です。

もうひとつめ。いらっしゃる皆さんの認識でたくさん見受けるのは、ちょこちょこっと、まるで歯の治療を受けるように行えば済むもの、という感覚です。これも人それぞれとは言え、十回通って言われるままにその時一生懸命やってみたからもう達成、というものでは、ほぼありません。


何故、一般向けに教室が開かれてそれが数多く存続しているのか、という点について考えてみましょう。

そもそもプロ養成施設が開かれた所にあるわけもありません。いくらバリアフリーの時代とは言え、夢がありませんもの。明らかに市井の人を対象にしています。

そうなると、一般の人にとって発声などお金を払って得る価値があるのか、というごく当たり前の疑問が湧きます。

ボイストレーニングのもたらす効果の華やかの側面のひとつに、歌声がよくなる、という現象があります。が、ただただそれだけのために、どれだけ一般の人が通い続けられましょうか。

つまり、それだけではない何か、にも出会うのです。大変地味で分かりにくい効果があるのです。人によっては本心から、そんなもの必要あるの?と思われるような。


必要だから、必要とされるから、在るのです。私自身が私的に町で見かける人に対して、あーこういう人にも知っていてもらいたいこと、あるなあ、と感じることは、少なくないのです。もちろん、うたうコースに於いては、歌声を磨くことを中心に進めていますけれども。