あまりうたわないコース、なんてふざけた名前で募集をしてみていますが、思いのほか、お申し込みが多いのです。
生まれた時から大きな声を出したことがない
というか細い自己紹介の言葉でした。どうも汎用性が高そうなので、個人を特定するセリフではないと判断し、もう遠慮なく書き残しておきたいと思います。
まあ要はこのかた、泣きながら生まれて来なかったことをおっしゃっていたわけです。以後今に至るまで、私くらい声の小さい人には二人しか出会ったことがない。たぶん日本人の中の1パーセントに入るんだと思います。と。随分な思い込みを持ったまま、生きて来られたのですね。そんなことはあるのかい?と問います。
あっついものに手を触れてしまった時、あちーっっって思わず出なかった?
ないです。
咳の音が大きく出すぎて困ったことは?くしゃみは?
ないです。
じゃあ、大きな声で思わず笑ってしまったことは?
毛布を握っていたからありません。
嗚咽、とか、号泣とかは?
ないです。
じゃあじゃあ、お酒飲んで嘔吐した時に声が出ちゃったりは?
ないです。
びっくりして大声になっちゃったことは?
ないです。
では、痴漢にあったことは?
あります。
その時は?
声が出ませんでした。
こういうやり取りを、確か先月も若い女性と行いました。案外、ひっそりと暮らしている方というのは多いのですね。そして、必要に駆られてボイストレーニングたるものにいらっしゃるのですね。おおむね、もう立場上どうしても、たくさんの人の前で届く声を出さなければならなくなった、という理由で。
最初はおっかなびっくり、自分に声が出せるわけがない、という思い込み通りでしたが、理屈に則ってみれば、
今までの人生で出したことのない声
というものには、簡単に出会えるものです。
怯えたような目で待合室にいらしたのが印象的でしたが、最後は緊張感もゆるんで笑っていただけました。
なに?定期的に続けたい?週一?
難しいことをおっしゃいますね。今ここでは、おおきな声を出すより困難な要望ですよ。まずはホームページの記事を読んでごらん。読まなかったから、私のことを女性だと勘違いしていたのでしょう。ご覧の通り、比較的ごつい男ですからね。
さてさて。どうしましょうか。どうしたらいいんでしょうか。