現在までに、いくらか出張レッスンを行なっています。事情が許せば、出向いてまいります。いつか書こういつか書こうと思っているうちに忘れてしまいそうなので、このうちの特殊なケースについて、記しておきます。
最初のメール。それは2016年の夏でした。歩くのが困難と聞き、たまたますごく土地鑑のある地域だったこともあり、二つ返事で出向いたものでした。教室に籠もっているのも飽きて来た頃でした。
そして、その事情というのが、以下の引用コピペ部分です。
小脳脊髄変性症についての知識も理解もないこちらへ、説明をしてくださっています。ここに書かれていないのですが、呂律が回らなくなるという症状もあることから、発声運動を通じて脳を動かそうという試みだったのだと思います。それが、当方への問い合わせのきっかけだったのでしょう。
それから月二回、通い続けています。確かに、当初舌の動きは鈍くなっており、歌いたいのに声も思うようには出ない、という状態でした。ここから地道に、ごく普通の発声練習を重ねていきます。
そして結論から言えば、このかたの仮説推論は、現時点正しかったようです。発声練習で呼吸を取り戻し、舌の動きを取り戻し、表情筋を取り戻していく過程で、家事を怠らず、興味のあることへの探究はもちろん、会話すべき人との関わりも減らさないように努めているうちに、お医者様も驚くほど、病気の進行自体が止まっているのです。
もちろん、肝心の発語もはっきりしましたし、呼吸も深くなり、今日などは綺麗なロングトーンが出ていました。キーを合わせれば一オクターブ半くらいの音域は苦もなく歌えています。
実は私、この症状病状快癒への取り組みかたの一つになるのではないか、是非色んな方にお話ししてはどうでしょう?手っ取り早くブログなどどうでしょう?と、お勧めして来ました。しかし、遺伝性の病気であり、未婚の御令息令嬢のために名前を出せないとのこと。大変活発で積極的な方ですが、これに関してだけは消極的です。
ですから、私が代わって、書き記しておかねばと常々考えて来ました。
つまり、身体の末端の動きから、脳を活性化することは、可能のようです。発声から始まって気がついたことは、家事全般に関わる所作動作を、昭和の、いやもっと昔の人々が怠りなく繰り返した運動を、便利になったからと怠けず、時間がないからと端折らないこと、といったことが、歳をとるほどとぼけていく身体機能を鈍らせない条件のひとつと考えても、いいんじゃないだろうかと。
ボイストレーニングが、歌などよりも大事な、ある奥行きを感じさせることは今までもたくさん経験して来ました。こんな事例から、このような方に出会えたことに感謝しています。