道に迷って声を出す


私は以前地図調査員なんて仕事をしたこともあります。一日中歩き回ります。地図がそもそも好きで、だから住所が分かれば辿り着けない場所はないと、過信しています。実際は、いろんなケースがあるのですが。

制作のお仕事をいただき、何故か急な納品を求められたものの、ちょうど同じ街に用事があったので、電車賃と速達代の両方をかける必要はあるまい、お届けものは直接届けてしまえっとばかり、私は颯爽とその街へ出かけて行きました。ところが、いわゆる住居表示がまるでありません。仕方なく頼ったGPSも曖昧な表示。そう。古く、表通りは観光地化著しい地域には、ありがちなことです。しかも平日にウロウロしている観光客なんていませんから、気がつけば私はかなり怪しい人になってしまいました。

どうしようもなく致し方なく、見かけた地元の方に片っ端から声をかける羽目に。だいたい人見知りで昔から第一印象に自信のない私なのですが、ここぞとばかりと頑張って、音量は抑えつつ落ち着いた響きと滑舌よろしく印象第一を旨に、尋ね回ってみたのでした。今数え上げてみればなんと七、八人の人に声をかけたのですが、面白いことに気持ちよく皆さん、町会名簿を引っ張り出したり他のお宅の呼び鈴を鳴らしてまで探して下さいました。やっぱりいろんな意味で古い街なのです。

まあ、ここまでしてもなかなか見つからないお家、というケースも確かに考えてみればあるにはあるものです。なんと最終的には、郵便局から速達を頼んだ次第でした。無駄足にはなりましたが、普段よりちょっと自分が頑張って、沢山の人に親切にしていただいたことは、気持ち良い経験になりました。

教訓。まずは素直に配送手段を使え。お仕事なんだから。