はずかしいレッスン

 確か、あれは十年ちょっと前でしたか。ちょうど私と同年の、極常識的サラリーマンであり、一人暮らしの部屋も非常に片付いているというタイプのきちんとした男性が、

「これ、初めて来て、やるんですか?」

と言ったのが、両手両膝を床につけた四つ足で発声する、という腹式呼吸を活かした発声の犬猫疑似体験。よくあることですよね。最近やっていませんが。

 

ああ。人はこれくらいでも、はずかしいのかな。と知った最初の例でした。

だって、個人レッスンじゃない?誰も見てないよ?僕しか。などと宥めすかしてやって頂く。勿論自分でも示してみせる。なんてことを、常々やっているわけです。

 

はずかしい。という気持ちも面白いもので、自分を萎縮させてしまうこともあれば、自分を解放させてあげることもあるものです。「あーえーいーおーうー」なんて言うより、「あーほーやー」と発声してもらった方が、遥かに、「声出ちゃった」と自覚して貰えるわけですし。そもそも個人レッスンにいらっしゃる方々は真面目な方であることが普通です。信用を失わない程度に、はずかしいレッスン、やってます。