良い発声擬似体験

おおなんとすてきな声なんでしょう。という声に生徒さんが辿り着く瞬間、というものがあります。そんな時私は言葉を失い、聴き惚れてしまいます。そりゃ目の前で良い声出されたら、そうなります。そしてそれはそのままその時に明確に、伝えるようにしています。実に今週はそういうことが複数回ありました。その段階まで来ると、この人が通うのもこの先長くはないな、と思うものです。

今日のその方の声は、実は以前にもきいたことがありました。それは、常々どうやったら目指すべき声を擬似体験してもらうか、に注力しているので、その一つをやってもらった時でした。個人差がありますから一概には言えません。たまたまその人に合っていたわけですが、それをひとつご紹介しましょうか。

椅子または壁に片手を突きます。身体全体が傾ぐと思います。ちょうど、直立から左右どちらでも真横に身体をまっすぐに伸ばしたまま倒れかけた姿勢です。これでうたいます。これによってなかなか下がらない重心が落ちて、滑らかに息が出入りします。結果、よどみなく美しい、耳に優しく伸びの良い歌声が擬似体験できました。
腕手首肩などに不安がないこと、腹式呼吸を活かせるようになっていること、この二点が必要条件です。

この記憶を大切に、目標として、自力で見た目にも普通に出せるようにすることを目指して来たものです。それが、出来ましたね。

それがご自身でも感じられたから、いつもは怯んでしまっていた高音にも勇敢に立ち向かって出せましたね。気持ちも大変大切です。面白いものです。

様々な方法で擬似体験をしてもらう。その印象を忘れないように、基礎を繰り返す。そんなやり方です。水道橋教室でも、不思議なことをたくさん行っていると思いますが、そういう意図なのです。