喉を庇う

風邪を召される方が多かった五月後半です。

治りきらないうちに狭い教室でボイストレーニングというのも、こちらは気合が必要ですが、それよりも実は、有意義なレッスンになることもあります。ま、これはずーっと前から何度か書いてきたのですが、直近実例が出来ましたので、これを機に書き残してみようと思います。

 

前週は状態が酷かったらしくお休みされました。翌週も、喉を逐次鳴らして落ち着かない様子でした。

 

歌えなければ途中で帰ります。

 

とおっしゃるほどで。不安でしょうねえ。そりゃ不安でしょう。

 

今回特にわざわざ書き残しておこうと思った理由があります。この方、喉をうまく使って、おそらく例えばカラオケで聴いたら、大変お上手に聴かせられる方です。しかし、重心が不安定なこともあいまって、喉に頼りがちになりやすいのです。ですから、このような健康状態ともなると大変不安になるのです。

 

対して私の主張は、その喉の使い方をいったん諦めて、より基本に忠実な本能的な出し方を踏まえた上で使って欲しい。というものでした。理想主義です。しかし、ご当人は、そんな子供みたいな出し方、下手っぽいから嫌、という主張です。なので、この点私が折れて、ではご当人が気持ちいいと思える線を引いてその上で進めていこうと思っていたものでした。しかし、その出し方だと、風邪ひいた時に困るだろうなと思いながら。

 

つまり、今回のご当人の不安は、私から見ればおり込み済みだったわけです。なので、チャンスと思いました。

 

 

今日の喉の状態でだって、歌えるよ。

 

 

結論を言えば、最後は時間ぎりぎりいっぱい歌って帰られました。めでたしめでたし。

 

 

喉が痛い時誰もが、本能で喉を庇うものです。使いたがらないものです。ボイストレーニングで得られる発声は、より本能に近いものです。すなわち、それらが合致するという好例なのでした。

 

だからと言って、風邪ひいて来ないでね。もしも私にうつったら、他の方にまたうつしてしまうおそれがあるわけです。先日書いた通り、風邪をひかないように生活する、の真意はここにあるのですから。