返信たより九月三十日

 石村吹雪さま

 

 はい、こんにちは。


こんばんは。ライブお疲れ様でした!伺うことができず、とても残念です。次回は是非!

 

 まあなんと素敵な台詞。そんなことを仰る生徒さんは、滅多におりませんのことよ。



先日のレッスンは、少々遅刻し、失礼いたしました。
また、あの日は何だかいつも以上に思い切りが悪く、のどが締まり、声が硬かった気がします。

 

 前回は、なんだか元気がなかったですね。目が丸く開いたままなので、表情を読みにくいという特徴がありますね。いや、それはそれとして、自覚があったのですね。



先週一週間は名付けて悶々ウィークでして、心の健康状態があまり芳しくなかったようです。
レッスン後、例の如くカラオケに行ったのですが、まあ楽しくない!声が出ない!

 

 楽しかったあの日の記憶を頼って、行ってみたのですね。かわいそうに。しかし、心の状態が大きく作用するのは、まぎれもない事実です。なので、実は大変重要です。私は十五年ほどこのお仕事をさせていただきましたが、一番意外な発見だったことだと思っています。



以前、歌っている最中に
「お腹空いたな」
とか
「さっき蚊に刺された所がかゆい」
とか雑念がよぎって歌に対する集中力が途切れると、一気に歌うことが楽しくなくなる、ということに気付いたのですが、心の状態は歌にかなり影響するのですね。

 

 集中力はもちろんです。歌っている最中に別のことを考えた人って、こちらからはすぐ分かります。声に表れるからです。これは、変化ですから簡単に分かります。しかしそういった、痒い、なんていう些細なことでも途切れるものなのですねえ。

 ただし、厄介なのは、集中力も大事ではありますが、集中すると顔全体、とくに目の周りから頬、口の周りに力が入り、ひいては喉にも及んで、堅くなりがちなのです。こういう方は、大変多いです。

 心の状態は、声に、歌声に、影響を及ぼします。改めて考えてみれば、当たり前のことかも知れませんね。緊張を解いた状態が望ましいということは、どこでも書かれ、言われていることです。そこを随時ほぐすことも、我々はひそかに気にしていることなのです。



ただ、一つ収穫がありました。
「ため息しか出ないわ?」
そんな心境でしたので、本当にため息混じりでイスの背もたれに寄りかかり、やる気ゼロな感じで歌ってみたところ、いつも力が入る鎖骨まわりの力がフーッと抜けていました。
スローテンポで、上から下に音が下がる曲だと、ため息混じりで歌いやすかったです。ちなみに、『ひだまりの詩』で練習しました。(笑)

 

 はい。こちらでいうところの、自棄心ですね。これはもう、大変参考になります。自棄酒をくらうときの気分、というのは大変有効です。

 さらに言えば、考えすぎないことにしました、と姿勢を改めたという方の声は、一気に伸びが出ます。真面目に考えすぎず、練習して来たまんま、身体がそのように動くと信じてあとは、考えないという心の持ち方。それぞれの性格にも依存しますね。面白いものです。



楽しんで歌うことを忘れず、今週はウキウキ気分でレッスンに伺いたいです。引き続き、宜しくお願いいたします。

 

 願わくば、 悶々とせずに日々が過ごせますように。そして折々、呼吸を気にして過ごしていてください。