堅気

昨年シブイオンガクスタヂオ飯田橋教室を作り、顔見知りになった近隣に勤める青年と立ち飲み屋さんでお話をしたときに、 

 

 

 

「このあたりは堅気の人が多いですからねえ、間違いなく、変な人が来たなあと思われてますよ」

 

などと言われていささかショックにも感じたものでした。そうねえ。ボイストレーニング教室ねえ。なんだかよく分かんないけれど、堅気じゃないイメージですよね。

 

でも、独立を決意するまでは私もそう思っていました。だってまず、生きていくのに必要ないですものね。

通われている皆さんは重々ご存知なことですが、我々講師陣、大変生真面目です。そもそもそういう人間としか私はお仕事出来ないと信じていますから、そうなるのです。勿論、人間が生真面目だから、このお仕事が堅気だなんて一足飛びに語れはしません。では、生真面目に一体どう、自分に対して説明をつけてこのお仕事をやっているのか、といえば。

声のもたらす印象というものによって、生きるのが楽になるケースがあるんですよ、奥さん。もともと人見知りがひどく対面自己主張が異常に苦手な上に、発声はおろか発音も悪いせいで、第一印象が非常に悪かったのです私。いや、第一どころか、学生時代はお友達を作るのに二年も三年もかかる子だったのですね。三年も経ったら卒業ですよお父さん。それが、声がはっきり出て、挨拶ひとつが相手に伝わることで、相手は自分を受け入れてくれるものだということが、二十代の終わりに分かったのですよ私。ああ、生き方で大いに損してきてたかもしれないな。そう思いました。

 

改善の過程とその効果を身をもって知る自分には、私と同じような性格境遇が形成した、生き辛さ、を転換、解消させてあげることが出来るんじゃないか、これは社会貢献になり得るにちがいない。しかも、うたを通じることで、堅苦しさなく楽しく得られたら、いいんじゃないか、結構、有り難い存在になるんじゃないかな、お兄さん、という思いから、はじめたのです。

 

流行おっかけて、後に残りもしない商品をただ売りさばくような詐欺人生よりは、よっぽど堅気ですよね。