私は昔プログラマだった

そういえば、会社を辞めたのは9月9日でした。あれからまさに20年になるのでした。やりたいことがあるので辞めます、と挨拶をしたのを憶えています。当然、ボイストレーナーを目指していたわけもありません。私がボイストレーニングを習い始めたのは、会社を辞めた後のことです。
それはそれとして、私が学校を出て偶然就ていたプログラマのお仕事というのは、試行錯誤が主でした。という言い方をすると誤解を受けましょうし、あれから20年を経て、いまどきのお仕事の仕方は違ってきているかも知れませんから、昔話だと思ってください。一つの結果への到達ルートは一つとは限りません。道順一つ考えても、いろいろあるものです。どの駅を使うか、どの道を使うか、によって、未特定な想像もしていない障害要素があることも普通です。それらを想定し、ちゃんと辿り着けるように準備をしておかないとなりません。 サイト内、飯田橋教室への推奨ルートを三つも仕立てていたのも、そんな考えの名残かも知れません。
シビアな作業に入っています。空調の冷気を利用して、ぼんやりとあったまってしまった防音室の気温湿度を下げるということに成功しました。が、若干時間がかかりすぎです。調整を要します。これがプログラマ時代を思い出させる試行錯誤の時期です。不安定要素は、遮音加減と空調からの冷気の漏れを許すか許さないかといったところですが、その微調整には重たい資材をえっこらせーと上げ下ろししたりという、まーあまた、気の遠くなるようなことをやっています。こんなことをやっていていいのは三日間と決めましょう。せめて会員のみなさんのレッスン再開に漕ぎ着けること、そして、ご新規お申し込みに対応するところまで、一週間と決めて。だってもう、8月が終わってしまったのですもの。
床が整う

土曜日。またまた突然に職人さんが現れました。ご本人の了承を得て、載せさせていただいております。昨日、床が成る、などと書いていましたが、実際は部屋の縁はカーペットが余ってめくり上がっていたのです。私の言い訳としては、あとでやろう。です。どうせあとでやらなきゃならないのに、どうして人はやり残してしまうのでしょう。
そこを皆さん一生懸命綺麗に仕立てて下さいました。ありがたいことです。あ、ちゃんと書いていなかったかな、私が勝手に突然一ヶ月移転のために休むからと言い出してもその機にやめてしまうことなく、移転再開のためにわざわざお手伝いに来てくださる会員の皆さんのお話です。
これを後回しにしたのは、エアコンの細工に身と心を奪われているに他なく、そのためには引越し荷物が積み上がった状態も邪魔になるわけです。壊すこと作ることばかりに夢中になって、まるで夜逃げのように荷造りしたものを解いていきます。数々の譜面、朗読するとおかしい本たち、記録表、パソコン、プリンター、録音用機器その他、分類し難いいただきものたち。おかげでちょっと片付いて、防音室内の吸音措置も進みました。
一ヶ月に渡る工具使用と木材運びによって、右手はむくみのように腫れています。箸が使いづらいです。ピアノなんか弾きたくありません。握力の劣化でギターだってピックを落としてしまう始末です。だからというわけではありませんが、飯田橋教室は移転再開後、あまりうたわないコースを中心に募集をして参ります。うたうコースというのは世に溢れていますから、最早わたしなどが躍起になるよりも、水道橋の春奈に引き続き頑張っていただきたい。まるまる一ヶ月以上、例年の夏に比べて増えた体験レッスンの応募に対してひとりで請け続けて一段、逞しくなった春奈と久しぶりに話して、そんな気持ちになっています。
さあそろそろ募集を始めるか、と思ったものの、それ以前に今年は春を過ぎた頃には飯田橋教室で私が担当する時間が満杯になっていて、未だキャンセル待ちのままほったらかしてしまっている方があるくらいだったのをあらためて思い出しました。そのために、うたうもうたわないも区別なく対応できる経験ある新しい講師をさがしていたのでした。
床が成る

壁の下地があらかた出来ておおがかりな作業が一段落したので、床を整えていきました。床を整えるためには、さんざんに散乱した木っ端をかき集め、あらためてお掃除をし、整理をして、凸凹のひどかった箇所をパズルのごとくに組み合わせて作りました。まあ、今回の作業はすべて形の合いそうなものを拾い出して作る立体パズルのようなものでしたが。
床ができて、思い出しました。そういえば五年前も、床ができて落ち着いたなあ、という写真を撮ったのでした。旧教室は異様に狭く、腰かける場所を作る隙もないまま進行していたんだっけと。今回は広い分だけ床にたどり着くまでに時間がかかりました。当然まず寝そべります。窓から光が入り、風が入ります。眠ってしまいそうです。
さて、床を適当に敷き詰めて。と書いていて気がつきましたが、床のカーペットは契約時に敷き詰められていたものが綺麗だったので剥がしておいて、あらためて自分で作った床の上に敷いた、ということです。まだ今回新しく買った資材はありません。どころか、なぜか木材が余っています。あらためて、旧教室での使用量の多さに驚きます。

ようやく、防音室へとりかかります。防音室は、お持ちの方はご存知だと思います。冷房がないと、営業不能です。営業不能というレベルではありません。事実、先週ちょっと練習をしてみたのですが、10分ごとに出入りするほど、暑くなるのです。なので今回は一ヶ所穴を開けて冷気を給気する作戦に出ようというわけです。おお。まだまだ終わらない教室作り、ついに四週間が過ぎようとしています。
今回そのために購入しておいた給気扇を開梱してびっくり。コンセントプラグが付属しておらず、泡を食いました。こちらはただの日曜大工です。致し方ありません。近所のお店に走ってきましたとさ。さてどうなるのことでしょう。多分、大詰めのはずです。
職人来る

さてさて、ようやく壁作りの基礎がほぼ全て終わりました。これから遮音シートを貼って、ひとまず使える壁にするべく、集成材を貼っていきます。という段で、お手伝いの方の中に、えらくお仕事の細かい方が現れました。玄関はこの通り、まったく新しい資材は使っていないのに、従前比なんだかとても明るい空間に見えます。私がやると大雑把で、こんな風には仕上がらないことでしょう。道具を託すと黙々と、もう周囲には誰も寄せ付けない雰囲気で、時折首を傾げ舌を打ちつつ、やってらっしゃいます。好きを通り越して職人的です。もうお任せです。
なので私は扉をもう一つつけてみたり、床を貼ってみたりしています。今まで当然土足で作業をしてきましたが、木屑が積もる作業から、そろそろカーペットを敷きつめても進められるところまで辿り着くでしょうか。今まで邪魔だった資材も木っ端を除いては見事に綺麗さっぱりしてきて、今度は引越し荷物が邪魔になりまして、防音室内は荷物だらけになっています。まだまだこれから、最大の懸案だった空調問題をなんとかする作業に入らねばなりません。それにしても毎日毎時毎分、道具をどこに置いたか分からなくなり、眼鏡も当然そんな調子なのですが、今日はどうやら自宅へ持ち帰るのを忘れたようです。どこかにありますように。

九月一日再開は諦めました。がせめて、九月第一金曜日あたりからレッスンを再開しようと今日は思っていました。しかし勿論、まだどうなることか分かりません。会員の皆さんはこちらをご覧になり次第、ご確認のためメールをください。ただし、私の右手は握力をあらかた失っており右手頼みの携帯メールも覚束ない有様ですので、いつもほど早く返信ができませんことを、御承知くださいませ。
講師を迎える

壁を作る。と同時に、まーだ残してきた荷物もあったのでした。これを運びました。もう、残っているのは手荷物程度です。そして同時に、うたわないコースに関しては、講師を増やすことが出来ると思っていました。出来れば、大きな声、はっきりした声、届く声、伝わる声、なんてものとは無縁だと思い込んで生きてきた方々の気持ちを汲みながら対応できるような人をもとめて。また、私などとは違って専門教育を受けられた、トレーナー経験のある方、且つ、最低限作詞作曲と演奏程度できる現役うたうたいの方も探していました。明白に私ひとりの手では足りないのです。
いるもんです。いやきっといくらでもいる筈なのです。今日は若干手を休め、だらっだらに汗をかいたままのシャツでその方とお話をしてみました。一応、着々と準備は進めています。近日ご紹介することでしょう。幸い、自分で壁を作る私の気持ちにも理解を示してくださる方でした。
そんなこんなで、やっとこ今日は一枚壁を作りました。この壁によって大きく変わるのは、空気の流れです。ほんの独り言もふわっと鳴り響いていたのが、明らかに失われました。もちろん、まだ隙間もありますから壁越しに聞こえますけれども。
それにしても、あんなに壁を立てたのにまだ資材があるなんて、不思議です。移転先と元では面積が4倍以上も差があるというのに。
扉ふたたび

月曜日の夜、汗を可能な限り拭き取りお馴染みの店へお参りのように出かけたところ、疲れのせいか酔っ払ってしまいました。何故か膝が痛く頭の重い朝でした。気を取り直すように資材を整理しているうちに、最初に作った床がやはり急場凌ぎだったのが見えてきたので、修繕します。
毎日毎日、楽しいなと鼻歌まじりの作業ではあるものの、よくやるわと自分で思います。確実に筋肉痛も擦り傷も増えつづけ、度重なる立ち眩みも相俟って、身体はくたびれてきているのを感じます。もうゴールを逆算しなければならないと思いながらも、一日でどれくらいできるんだろうか、それがどうしても見えてこないのです。そろそろ、再開はいつになりますかというメールが届き始めてもいます。

実にもどかしいものです。私も予定を立てたいのです。でも、日曜大工も簡単ではないのですねえ。まさか、あんな板張りむき出しでみなさんを迎えるわけにはいきませんものねえ。
最終的に今日は扉をひとつ設置しました。最早なつかしい、入り口の扉です。移転元では全開に開くことができない狭さでしたが、移転先のこちらでは、九十度以上に開くことが出来ます。これにてほぼ近隣への音漏れもなくなり、最後の詰めの作業へ入っていけましょう。
のこりもの

実は解体作業の折りに、どうしても剥がせない板きれが数組と、電気工事に関わる箇所に一枚大きめの板を置き去りにしていたのでした。
そろそろ壁作りも大詰め。それらをも使わねばならないし、いつまでも置き去りは困るので、真昼間にそれらを解体して移転先と三往復ぶん、運び込みました。移転とは言っても移転元から先へ歩ける距離であるのは、便利です。しかし、いかに希望されてお手伝いをしに来たとはいえ、お昼どきの飯田橋駅前を、小柄な女性に木材を担いで歩かせるのは少し気がひけたものでした。ま、ご本人こちらの心配をよそにどういうわけか楽しそうでしたが。
何せ毎日進捗が読めない日曜大工です。おあつらえのお仕事があるかどうかは、全く分からないのです。手間数が多い分、一人でやろうが二人でやろうがおそらくかわりないことだったでしょう。実際今日はもう一つ壁を立てるつもりでしたが、到底叶わず。
これは、思ったよりは時間がかかりそうだなあと思いました。写真は、いまやもう何の変哲もない、ただの壁です。
バランスボールの思い出

昨日は手を休めるためにほぼ資材整理だけをしていたので、手が少し楽です。整理だけでも書けはしますがあまりにも違う話になるので、無理矢理思い出話を書き残しておきます。今の今は書くのが習慣化していますので。
私が水道橋教室で一人でやっていた頃、直径60センチほどのバランスボールをくださる方がありました。余っているから。家の部屋では結局邪魔だからという理由で。ありそうな話ですよね。
で、単に面白がってみなさんに椅子の代わりにそれに座った状態でレッスンを行うということを数ヶ月やっていました。ほとんどの人が、最初はうまく座っていられません。自称運動音痴、絶対無理無理と言う方にも、強いて続けてもらいました。週に一度のことです。たまにはいいじゃないですかと。
本当に面白いことに最初の頃は床に転がり落ちる人が続出していたものです。が、しばらくするとほぼ全員が、座っていられるバランスを身体で捉えられるようになったのでした。そんなに難しいことではなかったわけです。反復ってとても単純なことですが、これも反復によって得られるものの一つだったのかなと回想します。そして、全員が全員、やたらと声の出やすいバランスを同時に体感され、身につけられたのでした。
こりゃあいい。と思っていたある冬の日、ヒーターに接した途端に破けたゴムの塊と化してしまいました。新規購入も出来ない経営事情のまま月日は流れ、作った飯田橋教室は狭すぎて壁に当たってしまうので諦めていました。が、 新しい教室では、広さもあるので使えることでしょう。なんなら待合室に置いておきましょうか。まず、乗れ。乗っとけ。と。
どうでしょう、椅子じゃなくてバランスボールだけが置いてある待合応接室。
今回こそは初めての人にも優しい、見た目から門戸の広い教室を作ろうと思っているのですが、どうでしょう。これくらい、いいですよね。大丈夫ですよね。この点、まったく自信がありません。自信がないというのは、本当に厄介です。始まらないのですもの。始められないのですもの。
だからこそ
こっそりはじめよう
シブイのボイストレーニング
シブイは大きな看板も掲げませんし広告も出しません。だって、ひっそりこっそり通いたいじゃありませんか。自信がないから、通ってみるわけですものね。
話が逸れました。もしも日本の家屋でバランスボールを持て余されている会員さんがありましたら、ありがたく頂戴しますからね。
やっつけない

壁を作り始めて五日目。まだ作り続けています。五年前にシブイ飯田橋を作った時には、レッスンを行う部屋が出来上がった時点でレッスンを再開しつつ、残りの部分は空き時間にちょこちょこと作り続けること二週間、ようやく完成に至りました。が、今回はそのような窮屈日程にしたくないなと思うのです。
動いていないと落ち着かないという勤勉な方が午後お手伝いに来てくれました。たまたまですが今日からは、これまでと違ってみなさんが目にしたり触ったりする箇所に入ります。厚さ重さに任せてとにかくやっつけるという姿勢でやって来たのとはちょっと違います。今回はあまりがさつにやっつけずに、自分なりに丁寧に仕上げていきたいところです。なので、ややこしく分量的に途方もない素人工事体験壁作りの巻を一からしていただきました。その方は学校の先生で、聞けば聞くほど確かに、学校の先生というのは体力のいるお仕事だし、重たいものも沢山運ぶし、妙に工具には慣れていらっしゃるわけです。四時間、狭い中でも動き回って珍しい身体の使い方をしていただけたと思います。
曰く。一日だからいいけれど、これ一ヶ月はきついですね。
まあそうなんです。一ヶ月かかる理由は解体に二週間かかって、素人のくせに長さもバラバラ傷だらけの資材を流用しようとしているせいでかかってしまうわけです。かけたくありません。これでも長めに見積もったつもりです。でもどうやら、九月一日全面再開というのは無理がありそうです。無鉄砲な私も、日曜日のライブのためにすっかり痺れてしまっている手を休めるなりなんなりしなければならない気持ちになりました。土曜日曜とあまり進まないことでしょう。しかし男手を要する工程もなんとか過ぎて行きました。週が明けたらまた、地道に作り上げていきます。
市販壁来る

真っ黒な壁面を作っておきました。なんのためかと言えば、今回は防音室を入れるのです。しかし、市販の防音室の精度がどの程度なのかは、この7月にほうぼうへ出向いてみて分かっています。いわゆる防音室は、周囲のお宅に迷惑のかからない程度まで音を小さくしてみせますよ、くらいのものであることは。無論、理論上は完全に聞こえなくすることも可能ということですが、それは商品としてはなかなか現実的でないというわけです。まあ、そうですよね。確かに現実的な使い方としては、近隣のよその方への配慮ができればいいわけです。
しかし、こちらはそのつもりはなく、これまでの経験を活かしてできる限りのことをしたいのです。つまり、防音部屋の中に防音室のを設置する。です。その感じがこちらの写真でお分りいただけますでしょうか。真っ白です。白黒のコントラストが眩しい。が、眩しく見えるのも今だけです。今後壁で覆われてしまいます。
無事設置が済み、おかげで出来た空間に引越し荷物を詰め込んで、作業場ができました。防音室が届く順番待ちにしていた床作りも、下地を完成させることができましたので、今後はその上が作業場になります。それが何より嬉しいことです。気がつけば、流用する資材も半分以下ほどに減っているではありませんか。

作るのは楽しい、などと言いながら、夕方5時頃には筋肉痛と汗まみれの身体、脳みそはどんどん間抜けになり、動きを鈍くしています。怪我の危険があります。防音室で久しぶりにギターを鳴らしてみましたが、右手はもちろん、左手は指先に怪我をしてしまったのとは別個に、ものすごく動かないことに気がつきました。いやもう、頑張ってますねえ、としか言いようがありません。音チェックほかのために来訪した世古武志くんはまた、私の言う、楽しいでしょ楽しいでしょ、の連呼に、まるきり気のない相槌を繰り返します。あれを生返事、と言うのでしょう。
さて、再開はいつになるのでしょうか。